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ユーラシア大陸上陸初日、シベリアの辺境で車のメカニックを探す【すみません、ボクら、迷子でしょうか?:第3話】

取扱説明書に「エンジン回転中に点灯・点滅したときは…」の一文

森が激しく燃えているが、構っている余裕はない。
こっちは警告灯が燃えているのだ

ダッシュボードから、車の取扱説明書を取り出した。目次からパネル類の説明ページを探し出し、マークを見つけた。添えられている一文を読むと、「エンジン回転中に点灯・点滅したときは……」

おお、これですこれ、まさにこれ。エンジンは回転していました。まったく同じシチュエーションが記載されているということは、よくあることなのだ。解決策はある。例えば、どこかとどこかを同時に押すと、再起動して、何事もなかったように警告灯が消えるとか。そんな感じだろう。

ああよかった、もうダメかと思ったですよ。はやる気持ちを抑えつつ先を読むと、

「販売店で、点検を受けてください」

…………。
…………。
…………。

時間が止まった。こんなに役に立たない文章は初めて見た。便所の落書きの100倍以上、意味をなさない。心がこもっていない。勝手に越境しておきながら僭越ですが、言わせてください。

「どこにあるとです、販売店?」この1行でコトを済ます気なら、マークとか取扱説明書はいらないと思うのです。

「販売店にGo!」という1行をピカらせてくれたら、コンマ1秒で状況を理解できた。絶望はするが、よっぽどスッキリする。壊れていてもなお、清々しい。

もし不調の原因がわからないというなら、「謎」のひと文字でもいい。せっかく表意文字を使っているのだから、それでいいじゃない。わざわざ高いお金を払ってデザイナーにマークを作らせても意味がないから、お金だけ払えばいい。と、デザイナーのボクから提案させていただきます。そうだ、いっそのこと、「ヾ(;´・ω・)ノ」はどうだろう? ね、Yuko?

「(・ε・)??」

まったく興味がないというお顔でして、そういえばYukoは「起きていないことで悩まない」が信条だった。警告灯は単なる警告でしかないから、どんだけ光ろうが、事件は起きていないというスタンスなのだ。危機感を共有できない相棒ほどいらいらするものはないが、「どうするの!? どうするつもりなの?」と訊いてこないぶん、可愛いやつと思っていただきたい。

遮断機と同時に地面から鉄の板が盛りあがる。恐ろしい仕掛け

車から降りて道路の真ん中に立ち、森に伸びる道を眺めた。このままスペインへ向かおうか?

次の町まで280km、およそ4時間。それまで警告だけで済んでくれるだろうか。突然、しゅるるる〜と気が抜けた声を出して、止まったりしないだろうか。森のなかでChin号! が逝ってしまったら、トイレに行くだけで熊か虎の餌食になりかねない。

熊か虎だ。滅多なことでは同時にお会いできない、自然界の両巨頭。優しく噛んでくれるのはどっちだろう? 調べてみたところ、虎はヒグマを食べるとのことなので、ボクらが熊に食べられてから、その熊を虎が襲えば食物連鎖的に無駄がないと知った。重要なことは、噛みかたではない、順番なのだ。くだらないことを言ってないで、ワニノの町まで戻ることにした。

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