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ユーラシア大陸上陸初日、シベリアの辺境で車のメカニックを探す【すみません、ボクら、迷子でしょうか?:第3話】

Chin号! は余命を宣告されてしまったのだろうか

シベリアの辺境で、メカニックを探し出す——。難しそうな課題だが、意外に簡単である。スマホの地図アプリに、英語で“Car Repair”と入力すると、町のあちらこちらで旗が立った。

近場の一軒を訪ねた。コンテナの墓場のような一角に、青い作業着の中年男性がいた。

「ズトラストビーチェ(こんにちは)」と挨拶をすると、「誰?」「……ってか、なんなのその車?」「小さっ!」「あいやー」と驚いた風の彼に、「ちょっと見てよ、ここ」という顔で警告灯を指さすと、「ああ、それね。よくあるんだわ」という顔で頷いた。

かようにして、車とは万国共通の言語であり、その土地の言葉を知らなくても、言いたいことは通じる。自動車故障診断機なるものをChin号!に接続して、さっそく診察を始めた彼の名はアレクサンドル。エジプトの王様みたいな名前だが、気さくなおじさんだ。

アレクサンドルは診断機のモニターを眺めながら、「○△※×□……」と言った。モニターの文字「○△※×□÷△※×□」を指でなぞって、「○△※×〓≡△※×□」と続けた。

それがロシア語かどうかも判然としないほどナニを言っているのかわからない。が、不治の病を見つけてしまったかのような口ぶりである。眉間に皺を寄せている。もしかしてChin号!は、余命を宣告されてしまったのだろうか。アレクサンドル、ぜんぜん意味がわからないんだけど、どういうこと?

車の中で診察するアレクサンドル。左のおじさんは野次馬。ガソリンは1リットル65円

アレクサンドル「気にするはありません!(笑)」

つまりこういうことなんだ、とスマホを見せられた。Google翻訳が、「車、ロシアにない」「データありません」「不可能です」「ごめんなさい」と謝っていた。

診断機にMAZDAのスクラムという項目がなく、そのため、どこが悪いかわからないらしい。姉妹車のSUZUKIのエブリイで調べてもらっても、該当するデータは見つからなかった。

ってことは、修理はできないってこと? 日本まで戻らないとならないの?

「南アフリカまで行く!」って大見得切ってまだ2週間と経っていないんです、カッコ悪くて日本になんか帰れないです〜と嘆いたら、「ロシアがガソリン安い、悪いやつ」「酸素、違った」「濃度とここは触媒です」とわかったようなわからないような言葉を並べたて、最後に「故障、ありません!」と言い切った。

アレクサンドル、本当? 故障してないの? 邪魔くさくなって追い出そうとしてない?「気にするはありません!」笑いながら、背中を叩いてくれたのである。

再びスペインを目指して西へ

再び西へ向かって走り出したChin号!

「故障、ありません!」

Yuko、アレクサンドルの言葉を信じよう。再びスペインを目指して西へ走りだした。途中、修理工場を見つけては、「ちょっと見てよ、ここ」という顔で警告灯を指さし、「ああ、それね。よくあるんだわ」という顔で頷くメカニック諸兄に診察を受けた。「気にするはありません!」のセカンドオピニオンを増やす旅である。

ちなみに、アレクサンドルの次に会ったメカニックはセルゲイといい、その次もセルゲイ、4人目はアレクサンドルだった。余計なお世話だけど、ロシア人の名前、少し増やした方がいいんじゃないですかね?

彼の名前もアレクサンドル

どんだけ「気にするはありません!」と言われても、やはり気になってしまうオレンジ色。Yuko、寄り道をしないでまっすぐヨーロッパを目指そう!

「だね」
「ところで、モンゴルのゴビ砂漠に行くとラクダがいるって」
「寄ってく?」
「ラクダッ!? いいねー、ちょっとご挨拶していこうか」

ハンドルを左に切ったがために、のち、大いに後悔するのである。(第4話へ続く)

■著者プロフィール、これまでの話、この先の話はこちら

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