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【バンライフの現実】36歳、旅人、ニート、お金がない...。バンライファーのリアルな「お金」と「仕事」

「こんな生き方もあったのかもしれないわねえ」

その中でも特に僕の記憶に残った女性が居た。干し柿の時期になるとこの農園に手伝いに来ているご近所の 74歳のHさん。

大阪出身なので、言葉の中に関西のイントネーションが見え隠れしている。品があって、落ち着いていて、あまり動じなくて、自分のタイミングでお話しをする方。惹かれるのは、どことなく自分の母に似ている所を感じ取ったからかもしれない。

僕がバンライフ旅をしている事について皆さんにひとしきり話したあとの事。休憩時間にバンで昼寝しようかと思っていたら、Hさんが僕のバンの中を覗きに来た。

Hさん「中、見てもいい?」
僕「どうぞどうぞ」
Hさん「まあ〜、すごいわねえ…」

褒めてくれた。「本当のことしか言わない人」に褒められると無性に嬉しい。

そしてバンの中を一通り見回しながらHさんは感慨深く「こんな生き方もあったのかもしれないわねえ」と言い、最後にありがとうと言い残し、また作業場に戻っていった。

——こんな生き方もあったのかもしれないわねえ。

それを聞いてバンの中に残されていた僕はなんか、なんも言えなかった。多分そんなに深い意味で言った訳じゃないと思う。

ただ、僕の中でその言葉を大切に、もう一度考えようと思い、反芻した。

誰かの言った何気ない言葉に

74歳のHさんがふと呟いた 「こんな生き方もあったのかもしれない」。

もう自分にはこんな事をする体力や精神的な余裕は残ってないかな、という諦観?
こういった生き方をもし過去していたら、今頃自分はどうなってたんだろう、という空想?
自分の生きてきた人生は素晴らしかったな、という誇り?

そんな風に僕は勝手に想像してしまっていた。

本人はそんなつもりじゃないかもしれないし、文字にするものでもないのかもしれないけど。自分の中で勝手に受け止めて、勝手に大事にしました。すみませんHさん。そしてありがとうございました。

バンで旅をしながらの仕事

僕はバンライフ旅の仕事として「農業バイト」を選んで良かった。その後も旅先で沢山の農家さんのところでお手伝いさせて頂いている。

ねぎ、ズッキーニ、大根、人参、さつまいも、リンゴ、みかんなどなど、常に季節のものに触れられて楽しい。太陽が気持ちいい。ズッキーニの受粉作業なんて今までの生活をつづけていたら一生出来なかっただろうな、と思う。

農家さんの善意で野菜を頂く事もある。採れたての旬の野菜を旅先でその日の内に調理して食べるのは最高の贅沢だ。

旅先でその地域を深く知りたければ「その地域に関わる仕事をする事」をオススメする。農業に限らず、漁業、旅館、レストラン、ゲストハウス、アクティビティなど探せば色んな仕事がある。

バンライフ旅を始めた頃は、旅をしながら出来る仕事はリモートワークしか頭に無かった。でも、今は色んな可能性があって、「あ、このまま多分旅を続けながら生きていけるな」って思っている。

「生きるチカラ」がまた一つ身についた。

「暮らし」の隣に居させてもらう事

バンライフを始めてよかったと思えた事の一つが旅先の「仕事」だ。仕事をすると地域の「暮らし」の一番近くに寄ることができる。

そこで暮らす人達が何を感じ、何を大切にして、何を不安に想い、何を誇りに生きているか見せてもらえる。それは僕が僕を知る事にも繋がる。観光だけしていた頃より、旅がよっぽど楽しくなった。

これからも旅を続けながら誰かの生活に少しずつお邪魔して、「こんな生き方もあるのか」って思う事をしていこう、僕も。

「仕事」と「自由」の最大公約数

「自由」になる為に仕事を辞めて旅に出た。「自由な旅」を続けるには「お金」が必要で、お金の為に「仕事」をした。

「仕事」はどこにでもある。人の手伝いを必要としている人は沢山いる。本当に。そしてどこへ行って、いつしたっていい。自分に合わなければ辞めてもいい。そして、疲れたら休む。

とても大事なことなのでもう一度言う。「疲れたら、休む」

「仕事」を始めても僕はまだ「自由」だった。「仕事」を始めたら「旅」がもっと面白くなった。思わぬ収穫。人は自分の人生しか生きることは出来ない。当たり前の事なんだけどね。

でもきっと、どんな人生を選んだって全部大正解、だったらまあ自分の好きに生きよう。Hさん、あなたが想像してくれて、きっと今までの自分の人生を誇りに思えた「こんな生き方」を僕、今やってます。

またいつか会えた時には「あら、まだやってたの〜、いいわね〜」って言われたいなあ。

■この著者プロフィールは、こちら

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