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吹雪のシベリアで夏タイヤ。車中泊という名の遭難かも...【すみません、ボクら、迷子でしょうか?:第6話】

旅立ち前に中古屋さんの若旦那がくれていたモノ

見事な着地だった。グッジョブ自分。

あたりを見渡すと、右に崖があるのはいいとして(ちっともよくない)、目を凝らして前方を見ると、10メートルほど先から下り坂になっていた。

下り坂? ということは、ここは丘の上か、峠のてっぺんってこと?

いつの間にそんなところを走ってきたというのか。困ったである、ブレーキは使用禁止になったので、下りとなると、今日はもう進めなくなってしまったではないか。となると、今夜はここで車中泊。滅多に車も通らない名もしれぬ峠のてっぺんで?

やばくない?

この勢いで雪が降り続けば、明朝には雪に埋もれている。雪に埋もれたら来年の春まで発見されないのではないだろうか。もしかして、車中泊ではなく遭難しているのではないだろうか? 

立ち位置について悩んでいたら、いいことを思い出したのである。

旅立ち前、中古車屋さんの若旦那が「これ、持っていきなよ」とチェーンをくれたことを。いまどきチェーンなんか必要ないでしょうと気にしていなかったけれど、ごめんなさい。死ぬほど必要でした。

若旦那に心よりお礼を申し上げて、まさか捨てちゃいないよなと荷物の奥底を探しまくり、チェーンを発見した。

車中泊なら、晩飯はカップ麺。美味しいけど、焼きそばの味はしない

「落ち着こう、自分。やればできる子なんだから」

チェーンさえあれば鬼に金棒! と意気込んで車から出た。後輪の横にうずくまり、説明書を広げた。

が、吹雪だ。風に紙がバタバタバタバタ煽られて、字なんか読めたものではないのである。そこで両手で説明書を車に押さえつけて、手順を暗記することにした。

自分はもとより誰も知らないが、暗記は得意なのである。小学校のころは、寿限無寿限無(じゅげむじゅげむ)を最後まで言えたのだ。それに「誰でも簡単に装着できる」ようなことが書いてあるだけに、手順は多くない。どちらかというと、こんなんでチェーンを巻けるのかと不安になるくらい文字は少なかった。

一言一句しっかりと暗記して、念の為に口の中で復唱した。

うん、大丈夫、問題なし。説明書をポケットに突っ込んで、チェーンを手にした。

えーと。
…………。
…………。

あれっ、どうするんだっけ?

思い出せなかった。1行も頭に浮かばないとは自分ながら驚いた。強風のせいなのか、雪の精のせいなのか。落ち着こう、自分。やればできる子なんだから。

作戦変更の後、覚悟を決めた

作戦を変更することにした。説明書に頼るのはやめよう。なんだかんだ言っても所詮チェーンにすぎないのだ。じっくりと観察してみよう。どうだ、なんとなく手順が見えてこないかい、と思ったら、ほら、手が勝手に動き出した。

あっちとこっちを繋げばいいに違いない。そっちからこっちへ通すと見せかけてあっちへ繋げるのもいいだろう。本能の命じるままにまかせたら、カタチになったのだった。

素晴らしい、見た目は悪くない。

あえて言えば、10cmくらいチェーンが余っているのが気になる。加えて、全体的にゆるゆるなのも見逃せないポイントだった。それらを改善すべく部分的にチェーンをぐるぐる巻きにして、こっちが緩いからあっちに引っ張ってみたりして、なんとか辻褄を合わせた。

出来上がった作品をしばし眺め、筆者は覚悟を決めたのである。

チェーンを外して、車に戻ることにした。

後日、天気のいい日に巻いてみたが、やはり上手く巻けなかった。雪の精は関係ない

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